イギリスの作曲家エドワード・エルガー(1857-1934)の後期の作品である《チェロ協
奏曲》は、ドヴォルザークのチェロ協奏曲などと同様によく演奏される、チェリストの重
要なレパートリーです。
オーケストラが主題を演奏した後に独奏が加わるのが協奏曲のセオリーでしたが、20 世
紀の作品であるこの曲は、独奏の重厚な和音で幕を開けます。協奏曲にはソリストが技巧
を披露するような側面もありますが、序奏の後に提示される主題は華美ではなく、もの悲
しさを感じます。
冒頭の和音がピッチカートで再現されると、第二楽章が続けて演奏されます。16 分音符
の旋律が駆け抜ける軽やかな音楽ですが、技量が必要な難所です。
第三楽章は、悲愴な雰囲気を抜け出た美しい楽章です。演奏時間も短く、暗い海の中か
ら息継ぎをしに出てきたかのような印象です。
軽快なメロディの第四楽章は、主題が反復される構成です。テンポが急激に遅くなる混
沌とした後半部を経て、独奏が第一楽章冒頭へ回帰し、フィナーレを迎えます。
本日のソリスト、印田陽介さんは「悲愴な中に垣間見えるイギリスの高貴さを表現したい」
とお話しされていました。協奏曲のオーケストラ・パートは伴奏の様なイメージを持たれ
がちですが、ソリスト、指揮者、プレイヤーが互いの呼吸を感じ、相乗効果を生むような
音楽をお届けできればと思います。
チェロ 田代 美緒
ブラームスは 1877 年 6 月にウェルター湖畔のペルチャッハで『交響曲第 2 番』の作曲
を開始し、同年 9 月、リヒテシタールにて作品を完成させました。これほどの大曲をわず
か 4 ヶ月という短期間で書きあげたのは、慎重な性格と言われる彼にとって例がありませ
ん。
ペルチャッハとリヒテシタールの風景を反映したかのような『交響曲第 2 番』は、対照
的な存在と言われる『交響曲第 1 番』の重厚な雰囲気に比べ、柔和で温かみや爽やかさに
溢れた作品です。
第 1 楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
穏やかで優しいながらも、哀愁を感じさせる旋律が非常に魅力的です。中間部では、ブラー
ムスの心の葛藤が垣間見えるような激しい盛り上がりも見せます。
第 2 楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ
どこか孤独なもの哀しさと優美さが詰まった楽章。彼自身、この楽章について「自分の
生涯で最も美しい旋律」と語ったそうです。
第 3 楽章 アレグレット・グラツィオーソ
もの哀しさから一転、愛らしく無邪気な音楽が繰り広げられ、夢見心地のような雰囲気
のまま楽章を終えます。
第 4 楽章 アレグロ・コン・スピーリト
沈んだような音楽と希望に満ちた音楽を見せる、最も生気に溢れる楽章です。情熱的な
フィナーレに向けて、様々な表情を生き生きと表現しています。
ホルン 鈴木かんな