作品解説

第8回演奏会

2014年10月25日(土) 14:00開演


L.v.ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調

 ベートーヴェンは18世紀のドイツに生まれました。生涯残した交響曲は9曲あり、特に「運命」(第5番)や「第九」(第9番)は日本でもお馴染みですが、本日演奏する第7番は、1812年、ベートーヴェン42歳の時の作品です。

 この曲はそれぞれの楽章が特徴的なリズムを持ち、そのリズムが楽章を支配しています。1つのリズムで曲を作る手法は、「運命」第1楽章のご存じ「ジャジャジャジャーン」の冒頭の動機が何度も繰り返され音楽を展開するのと同じですね(曲調は真逆ですが...)。

 それでは4つの楽章を、リズムに注目して紹介していきます。

 

第1楽章

ゆったりとした序奏が終わると現れる、「ターンタタ、ターンタタ」という特徴的なリズムがこの楽章を支配しています。色々な楽器、色々な旋律に、このリズムが隠れています。

第2楽章

曲調は一変して短調に転じます。冒頭から現れる「ター タ タ ター ター」というリズムが最後まで切れ目なく続きます。このリズムの上に対旋律が美しく歌い上げます。

第3楽章

曲調は打って変わって軽快なスケルツォです。せわしなく続く音符が突如急ブレーキを掛けると、まったく別の方向からゆったりとしたトリオが現れる、そんなギャップも楽しい楽章です。

第4楽章

突如、「タンタカタン」のリズムで始まります。ヴァイオリンの回転するような音形とともに、まさに狂喜乱舞の態で、生命力に溢れこの曲を締めくくります。

 

ワーグナーが「舞踏の聖化」と評した交響曲第7番、ぜひリズムに注目してお聴きください。

ヴァイオリン 池田千草


J.ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲

『ハイドンの主題による変奏曲』は、ヨハネス・ブラームスによって1873年に“交響曲の父”ヨーゼフ・ハイドン作、『ディヴェルティメントHob.II.46』第2楽章「聖アントニウスのコラール」を用いて作曲されました。オーケストラ版の他に2台ピアノ版も作られたため、作品番号に“a”が付いております。

 変奏曲はその名の通り、最初に主題が提示され、数曲の変奏、終曲という流れで演奏されます。この曲ではまずオーボエが主題を提示し、その後主役を変えながら8つの変奏を演奏し、パッサカリアを用いた壮麗な終曲で幕を閉じます。曲想は各変奏それぞれ特徴のあるものとなっておりますが、いずれの曲も“変ロ音(B♭)”を中心としてすっきりまとまって終わります。また、この曲は第4変奏と終曲を除き各変奏が主題と同じく58小節で作られています。ちなみにブラームスの誕生日は5月7日でした(惜しかった...)。

 さて、近年の研究で原曲のディヴェルティメントはハイドン作ではないと言われてきています(変奏曲を作ったのは間違いなくブラームスですのでご安心を!)。故に、最近では『聖アントニウスのコラールによる変奏曲』とそのまま呼ばれることもあるそうです。とはいえ、私たちにはハイドンのネームバリューのおかげか依然として「ハイヴァリ」や「ハイ変」と略して定着しています(これからどうなるかはわかりません)。

ホルン 余田尚史


S.プロコフィエフ:交響曲第1番ニ長調「古典交響曲」

「古典交響曲」はプロコフィエフが音楽院在学中にハイドンの技法をもとに「現代にハイドンが生きていたら」というコンセプトで作曲されました。「古典」と銘打たれているとおり明快かつシンプルな構成ですが、完全な古典音楽ではなく、プロコフィエフ独特の転調や曲調を感じられる興味深い作品です。

 

第1楽章 Allegro ニ長調 2/2 ソナタ形式

開始後にアルペジオ風の第1主題がニ長調で現れますが、すぐにハ長調に転調します。その後、第2主題がイ長調で弦楽器によって提示されるのですが、ファゴットのユーモラスな伴奏にも是非ご注目ください。その後、矢継ぎ早に展開部、再現部と続き、第1主題から派生したクライマックスで華やかな花火のように終結します。

 

第2楽章 Larghetto イ短調 3/4 三部形式

透きとおるような高音でヴァイオリンが主題を提示し、その後にフルートがそれを受継ぎます。ハイドンのシンプルさ、プロコフィエフの美しさを感じられる楽章です。

 

第3楽章 Gavotta (Non troppo allegro) ニ長調 4/4

交響曲では通常、メヌエットかスケルツォが組み込まれるのですが、ガヴォットが用いられているのが特徴です。転調を繰り返し、淡々とリズムが進行する点に無機的/機械的な雰囲気を感じられます。この楽章の主題は、バレエ「ロメオとジュリエット」の中でも使われています。

 

第4楽章 Finale (Molto vivace) ニ長調 2/2 ソナタ形式 

非常に短くテンポも速い楽章ですが、ソナタ形式をとっています。しかも、演奏者が困惑する程の難所としても知られています(笑)。速いテンポと短い間隔で展開され、転調も行われるため、新幹線の車窓から風景を見ているように、颯爽と様々な場面が駆け抜けていきます。

ファゴット 谷本浩一